アメリカ向け越境ECのはじめ方!市場動向や販売方法・法規制を解説
- return helper
- 5月18日
- 読了時間: 20分
アメリカは日本からの越境EC購入額が1兆円を超える巨大市場です。
この記事では、EC化率16.1%のアメリカ市場に参入する手順と、Amazon、eBay、Walmartなど主要プラットフォームの違いを解説します。
あわせて、デミニミスルール見直しのリスク、CPSCやFDA、MoCRAといった法規制、返品コストを抑える方法など、実務で押さえるべきポイントを整理して紹介します。
日本・アメリカの越境ECの市場規模
近年、越境EC市場は急速に拡大しています。複数の調査機関が公表した最新データでも、アメリカのEC市場は引き続き大きく成長しています。
米国商務省センサス局によると、2025年第1四半期(1月〜3月)のアメリカにおけるEC売上高は約3,002億ドルで、全小売売上の16.2%を占めました。
2025年通年のEC売上高は1兆2,337億ドルで、前年比5.4%増となっています。また、民間調査では、アメリカのEC市場は今後も拡大が続くと予測されています。
経済産業省の調査によると、日本との越境EC取引では、2024年にアメリカの消費者が日本から購入した市場規模は1兆5,978億円でした。日本製品に対する需要は引き続き高い水準にあります。
また、アメリカは市場規模の大きさという点でも、越境ECの進出先として魅力的です。経済産業省の調査では、2024年の米国EC市場規模は1兆1,902億USドル、EC化率は16.1%とされています。
一方、米国商務省センサス局の公表値では、2024年のEC化率は16.1%です。なお、2025年第1四半期の速報値ではEC化率は16.2%となっています。
日本の物販系BtoC-ECの市場規模は2024年に15兆2,194億円、EC化率は9.78%でした。単純比較はできないものの、アメリカは日本よりEC市場規模が大きく、EC利用もより進んでいる市場といえます。
出典:LIFE PEPPER「アメリカECサイトTOP5」(https://www.lifepepper.co.jp/abroad/us-ec-top5-trends/)
出典:The Digital X「アメリカ越境EC2025年最新」(https://www.thedigitalx.net/blog/america-ec)
出典:corekara「世界の越境EC市場規模ランキング」(https://corekara.co.jp/contents/sales-up/ec-worldwidemarket/)
出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」
出典:U.S. Census Bureau「Quarterly Retail E-Commerce Sales 1st Quarter 2025」
出典:U.S. Census Bureau「Quarterly Retail E-Commerce Sales 4th Quarter 2025」
商材別のEC市場規模とEC化率
アメリカのEC市場を商材別に見ると、カテゴリによってEC化率に大きな差があります。
衣類や雑貨は、オンライン販売が活発なカテゴリです。日本製のアパレル商品や化粧品への需要も高まっており、日本のストリートファッションブランドやスキンケア製品は、品質の高さと独自性が評価されて人気を集めています。
家電やPC周辺機器も、EC化率が高いカテゴリです。日本製の精密機器や最新ガジェットに対する需要は安定しています。
ホビーや書籍の分野では、アニメフィギュアやトレーディングカード、マンガなど、日本独自のコンテンツ関連商品が強い支持を得ています。
一方で、食品や飲料はEC化率が相対的に低い傾向にあります。賞味期限の制約があるうえ、FDA(米国食品医薬品局)の規制が厳しいことが影響しています。
ただし、日本食ブームの高まりにより、調味料や菓子類などの需要は増加傾向にあります。
出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」
アメリカの消費者が越境ECを利用する理由
アメリカの消費者が日本の越境ECを利用する主な理由は、大きく3つに分けられます。
まず1つ目は、日本でしか手に入らない限定品や独自商品を求めていることです。アニメやゲームのコレクターズアイテム、日本限定のスニーカー、特定ブランドの日本限定コラボ商品などが代表例です。こうした商品は、価格よりも手に入るかどうかが重視されます。
2つ目は、日本製品の品質への信頼です。とくに化粧品やスキンケア商品、ベビー用品、家電製品などでは、日本製の品質の高さが広く認知されています。「安心して購入できる」という感覚が、購入を後押ししています。
3つ目は、価格面のメリットです。アメリカ国内で日本製品を買う場合、輸入業者のマージンや流通コストが上乗せされます。そのため、越境ECで直接購入したほうが安くなるケースがあります。
出典:UPS「UPS Pulse of the Online Shopper」(https://www.ups.com/assets/resources/media/knowledge-center/UPS_Pulse_of_the_Online_Shopper.pdf#page=10)
出典:DHL「2025 Commerce Trends Report」(https://www.dhl.com/content/dam/dhl/local/global/dhl-ecommerce/documents/pdf/g0-dhl-e-commerce-trends-report-2025.pdf#page=27)
アメリカ向け越境ECの販売方法
アメリカ向け越境ECを始める際、販売方法は大きく3つのアプローチに分けられます。
それぞれにメリットとデメリットがあるため、自社の商材や事業規模に合う方法を選ぶことが重要です。
現地のECモールに出店する
AmazonやeBay、Walmartなどの大手ECモールへの出店は、越境ECでよく選ばれる販売チャネルです。これらのプラットフォームはすでに膨大なユーザーベースを持つため、立ち上げ直後から一定の集客が見込めます。
ECモール出店の大きなメリットは、ゼロからブランド認知を積み上げなくても販売を始められることです。既存の購買導線に乗れるため、広告費を抑えながらテスト販売に踏み出せます。
とくにアメリカでは、欲しい商品があればまずAmazonで検索する行動が定着しており、購買意欲の高い層に効率よくリーチできます。
一方で、モール内は価格競争が激しく、販売手数料も発生します。加えて、ブランドストーリーや独自性を伝えられる範囲が限られるため、差別化が難しい点がデメリットです。
そのため、自社の商材特性や販売目標に応じて、モール出店にするか自社ECを構築するか、あるいは両方を併用するかを戦略的に選ぶ必要があります。
自社ECサイトを立ち上げる
Shopifyなどのプラットフォームを活用し、自社ECサイトを構築する方法もあります。自社サイトならブランドイメージを自由に表現でき、顧客データも自社で管理できる点が強みです。
Shopifyは世界175か国以上で利用されているECプラットフォームで、多言語と多通貨への対応が標準で備わっています。テンプレートが豊富なため、コーディングの知識がなくてもサイトを作成しやすいことが特徴です。
さらに、海外配送や決済の設定もしやすく、越境ECに必要な機能がそろっています。
自社ECサイトは、ブランド価値を高めやすい点が魅力です。顧客と直接つながりを築けるうえ、モールのような販売手数料もかかりません。
とくに、独自性の高い商品や高価格帯の商品では、自社サイトでのブランディングが効果を発揮します。
一方で、自社サイトは集客が課題になりやすいです。SEOやSNSマーケティング、広告運用などを通じて、自らトラフィック(サイト訪問数)を獲得する必要があります。
ECサイトを持つ現地の小売店に卸す
アメリカ国内の小売店やオンラインショップに商品を卸す方法もあります。この場合、越境ECというより従来型の輸出に近いビジネスモデルです。
卸売のメリットは、ロットで販売できるため売上が読みやすいことです。さらに、現地パートナーが販売やマーケティングを担うため、自社の運用負担も軽くなります。
ただし、卸価格での販売になるため利益率は下がります。また、販売価格や販促の進め方を自社でコントロールしにくく、ブランドイメージの管理が難しくなるおそれもあります。
アメリカの主要なECプラットフォームとそれぞれの特徴
ここでは、各プラットフォームの具体的な仕様や手数料体系、利用条件などを詳しく解説します。
Amazon
Amazonはアメリカ最大級のECプラットフォームで、非常に大きな市場シェアを持っています。Prime会員を中心とした購買力の高い顧客層にリーチしやすい点が特徴です。
出店プログラムとしては、Amazonグローバルセリングを利用すれば、日本からAmazon.comに出品できます。月額登録料はプロフェッショナルプランで約39.99ドルで、販売手数料は商品カテゴリにより5〜15.4%程度です。
FBA(フルフィルメントバイAmazon)を活用する方法もあります。アメリカ国内の倉庫に商品を保管し、注文が入るとAmazonが配送やカスタマーサービスを代行します。
FBA利用料は商品サイズや保管期間で変動しますが、Prime対応になるため売上の伸びが期待できます。
なお、審査や規制には注意が必要です。食品や化粧品、電子機器など一部のカテゴリでは、出品前に承認が求められます。
また、商標登録済みのブランドはBrandRegistryへの登録を検討するとよいです。模倣品対策や権利侵害の申告に役立つほか、A+コンテンツやストア機能など、ブランド訴求を強化する機能も利用しやすくなります。
Walmart
Walmartは全米最大の小売チェーンで、オンラインマーケットプレイスも急成長しています。実店舗で培った信頼を背景に、食品や日用品に強みがあります。
Walmartマーケットプレイスに出店するには審査があり、その基準は比較的厳格です。一定の販売実績や顧客評価が求められる傾向にあります。審査に通過すれば月額登録料は不要で、販売手数料はカテゴリにより6〜20%です。
なお、Walmartでは配送体制も重要なポイントになります。2日配送プログラム(Two Day Delivery)が用意されており、対応商品は検索結果で優遇されやすく、売上向上につながる傾向があります。
eBay
eBayは、1995年創業の老舗オンラインマーケットプレイスで、オークション形式と固定価格販売の両方に対応しています。約200か国で展開しており、中古品やコレクターズアイテムの販売に強みがあります。
手数料体系は、出品手数料が月250品まで無料で、以降は1品あたり約0.35ドルです。販売手数料は商品カテゴリや条件によって異なります。
出品の始めやすさも特徴です。個人・法人を問わず、比較的参入しやすいプラットフォームといえます。
さらに、eBay International Shippingを利用すれば、国際配送や通関、返品対応の負担を軽減しやすくなります。
出典:eBay「料金について」(https://www.ebay.co.jp/start/business/business-fee/)
出典:eBay Japan「各種手数料について」(https://www.ebay.co.jp/faq/fee/overview-selling-fees/)
Shopify
Shopifyは自社ECサイトを構築するためのプラットフォームです。マーケットプレイスではなく、自社のオンラインストアを開設できます。
料金プランは、基本プランが月払い4,850円、年払い3,650円から利用できます。
オンラインカード手数料は3.55%で、外部決済サービスを利用する場合は追加手数料がかかります。
機能面では、アプリストアに13,000以上の拡張機能があります。多言語対応や在庫管理、メールマーケティング、SNS連携など、必要な機能を選んで追加できます。
技術面では、HTMLやCSSの知識がなくても、ドラッグアンドドロップ型のエディタで本格的なECサイトを構築できます。さらに細かく作り込みたい場合は、Liquid言語の理解が必要になります。
出典:Shopify「プランと価格設定」(https://www.shopify.com/jp/pricing)
Google Shopping(Googleショッピング)は、ECプラットフォームというより、商品を検索結果に表示させる広告サービスです。
利用方法は、まずGoogle Merchant Centerでアカウントを作成し、商品フィード(商品情報のデータ)を登録します。その後、Google広告とアカウントを連携させ、広告配信を開始します。
課金方式はクリック課金(CPC)で、クリック単価は商品カテゴリや競合状況によって大きく異なります。画像付きで商品を訴求できるため、テキスト広告と比べて購買につながりやすい傾向があります。
データフィードの要件として、商品タイトルや説明文、価格、画像URL、GTINコードなどを含む情報を定期的に更新する必要があります。
フィードの最適化が、広告成果を大きく左右します。
アメリカ向け越境ECでの主な物流手段
越境ECで成果を出すには、効率的な物流体制の構築が欠かせません。
アメリカ向けの越境ECでは、主に3つの物流手段があります。
日本の倉庫から発送する
最もシンプルな方法は、日本国内の倉庫から注文ごとにアメリカへ直送することです。初期投資を抑えやすく、在庫リスクも比較的小さくできる点がメリットです。
一方で、配送日数が長くなりやすく、送料負担も大きくなりやすい点には注意が必要です。配送スピードが重視される商品では、販売面で不利になることがあります。
また、関税制度の見直しも重要なポイントです。アメリカでは、かつて800ドル以下の輸入品に適用されていたデミニミスルールが見直され、2025年8月29日以降、全世界からの低額輸入品に対する「duty-free(免税)」措置が停止されました。
このため、日本からの小口発送でも、商品や通関条件によっては関税や関連コストが発生しやすくなっています。価格競争力への影響を踏まえ、販売価格や配送方法を柔軟に見直せる体制を整えておくことが重要です。
ただし、日本からDDPで発送する場合は、送料や通関関連コストを含めた総配送コストが重くなりやすいという課題があります。とくに低単価商材では、配送コストの増加が利益率や販売価格に与える影響が大きくなります。
そこで注目されているのが、コストを抑えながら関税込みで発送できるDDPエコノミー配送です。
越境EC事業者のなかには、米国向け売上の比重が高い企業も多く、関税政策の変更による影響を受けやすいのが実情です。
こうした背景から、受付停止中の国際eパケットに代わる経済的な配送手段として、DDPエコノミー配送サービスが注目されています。
DDPエコノミー配送は、関税込み(Delivered Duty Paid)で発送できるサービスです。従来の国際配送と比べて送料を抑えながら、一定の配送スピードを確保できます。
中国や韓国などアジア発の越境ECでは、販売価格が安い商材が多く、送料への感度が高い傾向にあります。そのため、何年も前からEMSやeパケット、クーリエ以外にも、越境ECに特化した物流サービスが導入されてきました。
日本では比較的新しい考え方ですが、他国ではすでに確立された配送手段となっています。
YunExpressの日本正規代理店であるReturn Helperは、このDDPエコノミー配送を提供しています。価格を抑えつつ顧客満足度も維持したい事業者にとって、選択肢のひとつになるでしょう。
出典:THE WHITE HOUSE「Suspending Duty-Free De Minimis Treatment for All Countries」(https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/suspending-duty-free-de-minimis-treatment-for-all-countries/)
アメリカの倉庫から発送する
アメリカ国内に倉庫を持ち、そこから商品を発送する方法です。配送スピードの向上につながり、顧客満足度にも直結します。
たとえばAmazonのFBAを利用する場合は、事前にアメリカのAmazon倉庫へ商品を納品しておきます。注文が入ると、Amazonがピッキングや梱包、発送を自動で行い、返品対応も代行してくれます。
現地倉庫を持つメリットは、配送期間の短縮が期待できることです。送料も抑えやすく、返品対応も進めやすくなります。
一方で、あらかじめ在庫をアメリカへ送る必要があるため、在庫リスクと輸送コストが発生します。
代行業者を利用する
越境EC代行業者を利用する方法もあります。代行業者は、日本の商品をアメリカの消費者に代わって購入し、海外へ転送するサービスを提供します。
代表的なサービスには、Return HelperやBuyee、tenso(転送コム)などがあります。
とくにReturn Helperでは、返品対応に加え、B2C配送やB2B配送、ローカルフルフィルメントなど、越境EC事業者向けの物流支援サービスを提供しています。
世界17か国の現地倉庫を活用できるため、返品コストの削減や顧客満足度の向上につなげやすい点が特徴です。
出典:Return Helper株式会社「越境EC物流サービス」(https://www.returnhelper.co.jp)
アメリカ向け越境ECの主要な決済手段
アメリカ市場で越境ECを成功させるには、現地で広く利用されている決済手段に対応することが重要です。
最も一般的な決済手段はクレジットカードです。アメリカではVisa、Mastercard、American Express、Discoverの4大ブランドが主流で、なかでもVisaとMastercardへの対応は欠かせません。
PayPalは、アメリカで広く利用されているオンライン決済サービスのひとつです。ECサイトに銀行口座やクレジットカード情報を直接入力せずに決済できるため、セキュリティ面での安心感があり、越境ECでも重要な決済手段となっています。
また、Apple PayやGoogle Payなどのデジタルウォレットも急速に普及しています。スマートフォンでの購入が増えるなかで、ワンタッチ決済の利便性が支持されています。
さらに、BNPL(Buy Now Pay Later)と呼ばれる後払い決済サービスも注目されています。代表的なサービスにはAfterpay、Klarna、Affirmなどがあり、商品購入後に数回の分割払いで支払える点が特徴です。
出典:PCMI「North America’s Most Popular Payment Methods」(https://paymentscmi.com/insights/most-used-payment-methods-north-america-united-states-canada/#payment-methods-2026-worldwide:~:text=Most%20common%20payment%20methods%20for%20e%2Dcommerce%20purchases%20in%20North%20America)
出典:Liquid Web「The state of digital trust in 2025: what consumers expect now」(
アメリカのEC市場におけるトレンド
アメリカのEC市場は変化が早く、最新のトレンドを把握することが越境ECの成功につながります。
D2C市場の盛り上がり
D2C(Direct to Consumer)モデルは、メーカーが小売店を介さずに消費者へ直接販売するビジネスモデルです。アメリカではD2Cブランドの成長が続いており、とくにスキンケアやアパレルの分野で成功事例が増えています。
D2Cの強みは、ブランドストーリーを顧客に直接伝えられることです。さらに、顧客データを活用したマーケティングが可能で、中間マージンを削減して価格競争力も高められます。
出典:Statista「Direct-to-consumer (D2C) e-commerce sales by digitally native and established brands in the United States from 2020 to 2025」(https://www.statista.com/statistics/1251979/digitally-native-brand-d2c-ecommerce-sales/)
サステナビリティや循環型ビジネスへの関心の高まり
環境問題への意識が高まるなか、サステナブルな商品やサービスへの需要が増加しています。とくに、ミレニアル世代やZ世代は環境への配慮を重視する傾向が強く、購買判断の重要な要素になっています。
たとえば、リサイクル素材を使った商品やプラスチックフリーのパッケージは評価されやすいです。カーボンニュートラルな配送や、リユースやリサイクルのプログラムも支持を集めています。
出典:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」(https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002-1.pdf#page=83)
ソーシャルコマース・ライブコマースの拡大
InstagramやTikTokなどのSNSを通じた販売、いわゆるソーシャルコマースが急成長しています。とくに、TikTokShopはZ世代を中心に人気が高まっています。
動画コンテンツを見ながら、その場で商品を購入できる仕組みが特徴です。インフルエンサーとのコラボレーションも相性がよく、効果的な施策になりやすいです。
出典:Grand View Research「U.S. Social Commerce Market (2023 - 2030)」(https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/us-social-commerce-market-report)
モバイルファーストはもはや前提に
アメリカでは、ECサイトへのアクセスの大半がスマートフォン経由になっています。モバイル対応は、もはや「あればよい」ものではなく、前提となる要件です。
モバイルファーストでECサイトを設計する際は、ページの読み込み速度を最適化することが重要です。あわせて、タッチ操作に適したUIにし、チェックアウトの流れはできるだけシンプルに整える必要があります。
アメリカ向け越境ECをはじめる際の注意点
アメリカ市場へ参入するには、日本とは異なる法規制や商習慣を理解することが欠かせません。
現地の法規制
アメリカでビジネスを展開する際は、連邦法と州法の両方に対応する必要があります。日本のように全国一律のルールだけで判断できるわけではなく、州ごとに適用される規制や求められる対応が異なる点に注意が必要です。
とくに、消費者保護、製品規制・認証、広告・表示、個人情報保護などは、事前に確認しておきたい重要なポイントです。
出典:日本貿易振興機構「米国 E-コマースビジネスにおける法的留意点」(https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/dde176e8be6e7a7c/201803userp.pdf)
OECD勧告
OECD(経済協力開発機構)は、越境ECにおける消費者保護のガイドラインを示しています。取引条件の明示やプライバシー保護、紛争解決手段の提供などが含まれます。
出典:OECD「Recommendation of the Council on Consumer Protection in E-commerce」(https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/publications/reports/2016/05/oecd-recommendation-of-the-council-on-consumer-protection-in-e-commerce_g1g66e4e/9789264255258-en.pdf)
CPSC
CPSC(米国消費者製品安全委員会)は、消費者製品の安全基準を定める連邦機関です。玩具やベビー用品、家電製品などを販売する場合は、CPSCの安全基準に適合している必要があります。
出典:Consumer Product Safety Commission(https://www.cpsc.gov/)
FDA
FDA(米国食品医薬品局)は、食品や医薬品、化粧品、医療機器などを規制する連邦機関です。これらの商品をアメリカに輸出する際は、商品区分によってFDAの承認や登録が必要になる場合があります。
出典:Food and Drug Administration(https://www.fda.gov/)
FCC
FCC(米国連邦通信委員会)は、無線通信機器を規制する機関です。Bluetooth機器やWi-Fi対応製品、スマートフォンなど、電波を発する製品を販売する場合はFCCの認証が必要です。
出典:Federal Communications Commission(https://www.fcc.gov/)
MoCRA
MoCRA(Modernization of Cosmetics Regulation Act)は、2022年に成立した化粧品規制の近代化法です。2023年から段階的に施行されており、化粧品事業者にはFDAへの施設登録と製品リスト提出が義務化されました。
出典:Modernization of Cosmetics Regulation Act of 2022(https://www.fda.gov/cosmetics/cosmetics-laws-regulations/modernization-cosmetics-regulation-act-2022-mocra)
マーケティング規制
FTC(連邦取引委員会)は、広告やマーケティングに関する規制を担う機関です。誇大広告や虚偽表示は厳しく取り締まられます。消費者に誤解を与える表現は使用できません。
また、カリフォルニア州ではCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)が2020年から施行されています。個人情報の収集や利用、共有に関するルールや、消費者の権利を定めた制度です。
出典:日本貿易振興機構「米国 E-コマースビジネスにおける法的留意点」(https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/dde176e8be6e7a7c/201803userp.pdf#page=9)
税金
アメリカで越境ECを行う際は、関税と売上税(Sales Tax)の2つの税金を理解する必要があります。
関税
アメリカに商品を輸入する際は、関税がかかる場合があります。
かつては、デミニミスルール(De Minimis Rule)により、800ドル以下の小口輸入品については原則として関税が免除されていました。しかし、2025年8月29日以降は、この「duty-free」の扱いが全世界からの低額輸入品に対して停止されています。
このため、現在は800ドル以下の小口輸入品であっても、従来のように一律で免税になる前提では考えられません。商品の内容や通関条件によっては、関税や関連コストが発生する可能性があります。
越境EC事業者にとっては、これまでデミニミスルールを前提に組んでいた価格設計や配送設計を見直す必要があります。
とくに低価格帯の商品では、関税負担の増加が価格競争力に影響しやすいため、販売価格、配送方法、利益率を一体で見直せる体制を整えておくことが重要です。
最新の制度変更や運用動向を注視しながら、対象商品や販売方法に応じて柔軟に対応することが求められます。
出典:日本貿易振興機構「米国 関税制度」(https://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/trade_03.html)
出典:massdriver「アメリカ越境EC市場で成功するための設計トレンド10選」(https://massdriver.net/blog/us-ecommerce-ranking-market-size/#index_id18)
出典:THE WHITE HOUSE「Suspending Duty-Free De Minimis Treatment for All Countries」(https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/07/suspending-duty-free-de-minimis-treatment-for-all-countries/)
売上税(Sales Tax)
売上税(Sales Tax)は、日本の消費税に近い税金ですが、連邦税ではなく州税と地方税を中心に課される税金です。アメリカでは州ごとに税率が異なり、0%の州もあれば、地方税を含めた合計税率が約10%前後になる地域もあります。
また、2018年の最高裁判決(South Dakota v. Wayfair, Inc.)以降は、物理的な拠点がない州であっても、一定の売上基準などを満たすと、売上税を徴収・納付する義務が生じる場合があります。
出典:Avalara「2026 U.S. sales tax rates by state」(https://www.avalara.com/taxrates/en/state-rates.html)
出典:South Dakota v. Wayfair, Inc., 585 U.S. ___ (2018)(https://www.supremecourt.gov/opinions/17pdf/17-494_j4el.pdf)
高い返品率への対応
アメリカのEC市場では、返品率が高いことで知られています。とくにアパレルやシューズなどのカテゴリは返品が多く、返品総額も膨大な規模にのぼります。
返品率が高い理由のひとつは、試着感覚で購入する行動が一般的なことです。アパレルやシューズでは複数のサイズや色を注文し、気に入ったもの以外を返品する消費者が少なくありません。
さらにアメリカでは、無料返品が標準的なサービスとして期待されます。そのため、返品ポリシーが購買判断に大きく影響します。
越境ECにおける返品の課題は、国際返品の物流コストが非常に高いことです。アメリカから日本への返送料が、商品価格を上回るケースもあります。
返品不可のポリシーにすると購入をためらう消費者が増え、売上機会を失いやすくなります。一方で返品を受け付けると、返送コストが利益を大きく圧迫します。
この課題への解決策として、アメリカ国内に返品受付拠点を設け、返品された商品を現地で検品し、再販売する方法が効果的です。これにより、国際返送コストを抑えられるだけでなく、返品商品を現地在庫として再活用できるため、機会損失も最小化できます。
Return Helperは世界17か国に倉庫ネットワークを持ち、越境EC事業者向けに返品や交換、在庫再販をワンストップで支援するサービスを提供しています。
現地で返品を受け付けて商品状態を確認し、再販可能なものは現地在庫として活用します。不良品は適切に処理し、返品コストの削減を支援しています。
さらに返品対策としては、商品説明の充実やサイズガイドの詳細化が重要です。カスタマーレビューも活用し、購入前の不安を減らす工夫が求められます。
返品率を下げる努力と、返品が発生した際に効率よく処理する体制の両方を整えることが大切です。
出典:日本貿易振興機構「2024年の米小売市場の返品総額は8,900億ドルに達する見通し、新型コロナ感染拡大前の2倍以上に拡大」(https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/12/f9ffc99c4b6de079.html#:~:text=%E3%81%9F%E3%81%A0%E3%81%97%E3%80%81%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E8%BF%94%E5%93%81%E3%82%82%E6%80%A5%E5%A2%97,%E8%AA%B2%E9%A1%8C%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%83%92%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%8F%E3%80%82)
出典:Return Helper株式会社「越境EC返品・交換サービス」(https://www.returnhelper.co.jp)
訴訟リスクへの対応
アメリカは訴訟社会として知られており、ECビジネスでも訴訟リスクを考慮する必要があります。代表的なリスクには、製造物責任(PL)訴訟や知的財産権侵害、労働問題などがあります。
製造物責任訴訟は、商品の欠陥によって消費者が被害を受けた場合に発生します。アメリカでは「懲罰的賠償金制度」があり、賠償額が数百万ドルに達するケースもあります。そのため、PL保険(生産物賠償責任保険)への加入が推奨されています。
知的財産権侵害にも注意が必要です。商標権や著作権、特許権を侵害すると、権利者から訴えられるリスクがあります。さらに、Amazonなどのプラットフォームでは、アカウント停止につながる可能性もあります。
出典:日本貿易振興機構「米国 E-コマースビジネスにおける法的留意点」(https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/dde176e8be6e7a7c/201803userp.pdf#page=4)
まとめ
アメリカ向け越境ECは、市場規模の大きさと成長性から、日本企業にとって大きなビジネスチャンスです。2024年にアメリカの消費者が日本から購入した市場規模は1兆5,978億円にのぼります。
成功のポイントは、適切な販売チャネルの選択と、効率的な物流体制の構築です。あわせて、現地の法規制への対応と、高い返品率への備えも欠かせません。
法規制については、CPSCやFDA、FCC、MoCRAなど、商材ごとに異なる規制を理解し、適切に対応する必要があります。さらに、デミニミスルールの見直し(免税措置の停止)や売上税の徴収義務など、税制面の変化にも注意が必要です。
また、返品率の高さは越境ECの大きな課題ですが、現地返品拠点を活用すればコストを抑えられます。
Return Helperでは、返品・交換・再販売までをワンストップで支援しています。世界17か国以上の現地倉庫を活用することで、高額な国際送料や煩雑な通関手続きの負担を抑え、返品対応にかかるコストの最適化につなげることが可能です。
アメリカ市場への参入を検討している場合は、まず小規模に始め、市場の反応を見ながら段階的に拡大していく方法が有効です。Return Helperでは、FBA納品サポートやDDP対応の低コスト配送など、多様なロジスティクス機能も提供しており、アメリカ市場での事業展開をスムーズに進めやすくします。






